Spicy girl  No.5 <チョコレート騒動、その2>





ウソップの口からは、あ〜でもないこうでもないと、旨いことするすると嘘が吐き出され、
ボンちゃんは、先ほどの椅子に縛り付けられてしまった。
言うまでもなく、ボンちゃんの胸はのおっぱいに変身している。

「でな、サンジが言うには、『ボンちゃん縛って、目隠しプレイで焦らしてやりたいんだ』とよ」

「やるわ!あちしvサンちゃんのためならvこの柔肌に傷がいくつできてもいいのよぅ。耐えてみせるわねぃ」

純真なオカマを騙すことに手を貸してしまったウソップは、ボンちゃんが哀れで仕方なかった。
それと同時に、良心の呵責に胸がずきずきと痛んだ。

ボンチャンに目隠しをして、ため息をついたウソップの背後に、がいつの間にか、立っていた。
『ギャーーー!!!』と叫び声をあげそうなウソップを慌てて、は黙らせ、部屋の外へ行けと目配せをした。
ウソップは、後ろ髪を思いっきり引かれながら、とぼとぼと部屋を後にした。



「はぁ〜サンちゃん遅いわねぃ?鼻ちゃん?まだいるの??」

は、ボンちゃんの胸元を自分の気持ちにふんぎりをつけるように、はだけた。
ぽろ〜〜んと白い形の良い見慣れたおっぱいが零れ落ちてきた。
間違いなく、自分のおっぱい。ほくろの位置もぴったんこだった。

「きゃ!さっサンちゃん、いきなりなのねぃ!ぎゃ〜〜〜〜!!!熱いちゅうはねェ〜〜のかよ!!!」

――さって、これからが本番よ。まずは、コレね。え〜〜と……

『超瞬間型取り噴霧式粘土“カタトール”使用説明書
 1、肌にカタトールが、こびり付かないように、薄くクリームをのばすこと。
 2、カタトールを、まんべんなく噴霧し、できるだけ厚い層にする。
 3、5分で乾くので、乾いたら下から上に一気に剥がすこと。
 4、成功を祈る!
                          by.ウソップ』

――クリーム……。ん〜〜〜と、ああっとコレでいいや。

は、サイドボードに並ぶ大人のおもちゃの中から、「よさ毛ちりちりクールMG」なるチューブを取り出し
ふたを捻り、匂いを嗅いでみた。匂いは無く、ちょっとだけ手のひらに落してみるが、さらりとした液体でクリームとは
いえなかったので、ボードに戻し、他のものを物色した。
中にあるものは、どれもにはよく分からないものばかりで、それでいて、なんとなく使い方が分かるものもあり、
どきどきした。心の中で『きゃ!』『ひゃー!』とわけの分からない声をあげ、恥ずかしさに、撃沈した。

その間、ボンちゃんは、喚いていた。

「早くぅ〜〜〜サンちゃーーん!!カモーーン!!」

は、赤らむ顔をさげ火照りをのがそうと、手のひらを頬にあてたとき、カタトール説明書の裏に書かれた文字に
気がついた。

『ボンちゃんが可哀そうじゃねェか?よく考えて使えよ』

に直接言っても無駄だと、悟っているウソップの良心の呵責にたえない心が、書いた文字だった。

――可哀そう……だよね。ごめんね。ボンちゃんって?ちょっと待って?コレなら、自分の胸で出来るんじゃないの?

そうなのだ。よく考えてみたら、何もボンちゃんの能力を借りなくても、自力でカタトールで出来ることに
こんな間際になって、は気が付いたのだ。

――ど、どうしよう?やる?でも……???

躊躇するをサンジだと思い、ボンちゃんは、コッチが切なくなるほどの乙女心を、ばんばん言いだした。

「あのアラバスタがあたしたちの出会いよねぃ、あん、プリンスちゃんったら、照れてるのねぃ?」

伝わってくるボンちゃんの恋心は、自分の中にある想いとなんら変わりなく、聞かされるたびに
は、どれだけ自分がボンちゃんに対して、酷いことをしようとしたか、分かってきた。

――やっちゃダメだよ。ごめんねボンちゃん。

自分が情けなくって、は、とうとうしゃくりあげた。

「ん?あ〜〜んた、サンちゃんじゃナーイわねぃ!!!ちゃんでしょ!?」

しゃくりあげ、鼻をすすった音で、あっさりだとボンちゃんにばれてしまった。

「うわぁーーん!ボンちゃんごめんなさい!」

「じょ〜〜だんじゃナーイわよぅ!サンちゃんくるって嘘なんでしょ?もう、さっさと縄ほどけや!ゴルァー!!!」

は、ひっくひっくとしゃくりあげながら、ボンちゃんを縛り付けているベルトを外し、目隠しを取った。

「で、どぅ〜〜いうことなのかちら?あちしを笑いものにでもする気だったのねぃ!酷いわねぃ、ぷんぷん!!!」

ぷりぷりと怒りながら、縛られていたために痺れた腕を、さすっていたボンちゃんは、ふと、の顔を見た。

「あ、あんた!?」

ボンちゃん中々ナイスなオカマだ。騙されたことに怒りはあるが、ぽたぽたと涙どころか鼻水まで垂らして
後悔して泣くを見捨てることは、出来ないようだった。

「あぁもう!泣くんじゃナーイわよう!あちしがいじめてるみたいじゃナーイのよう!」

よしよしとを胸に抱きながら、ばんばんでかい手で、の背中をさすって宥めるボンちゃん。
女同士(?)ってやつは、どうにもこうにもよく分からない。

はライバルであるボンちゃんを利用しようとした浅ましさに、おんおん泣いた。
ボンちゃんにとっては、愛しいサンちゃんの心を独り占めするイヤな女だが、こんなに泣かれちゃ敵わないようだ。

「女同士よん。気にしナーイで言ってみなサーイよう。あちし、あ〜〜んたのこと、嫌いじゃナーイしv
 なんなら、サンちゃんの姿のほうが、話しやすいんなら、変身してあげるわよん?
 泣くんじゃナーイわよぅ。あちし、女の子の涙にはどぅ〜〜しても逆らえナーイわよぅ
 あ〜んたよく見ると、あちしの好みだし?サンちゃんいなけ〜りゃ〜奪っちまいそうよぅ!
 がーーーっはっはっはは!じょーだんじゃナーイわよう!」

「ひっく……ボンちゃん。ごめんなさい、許してくれるの?」

「心配ナッシング!!!あちしとあ〜〜んたは言わば戦友?恋の道、同じ男を愛する仲間よ!友よ!」

「うぅぅ〜〜ボンちゃーん!!大好き」

「へっ!?」

は嬉しさのあまり、ボンちゃんに抱きついた。ボンちゃんも思わずしっかり抱き返したが、
その時、ドアが乱暴に蹴り破られた。

「ちょっと待て!!!コラーーーーーッ!!!」

「きゃ!サンジ」
「ぎゃ〜〜サンちゃんvv」

あらあら、きわどいところで、サンジ登場だ。タイミングが良いのか悪いのか?
展開的にはナイスだが、サンジにとっては最悪だろう。いや、にとっても最悪だ。ボンちゃんには美味しいかもしれない。

「で、どういうことなんだ!?クソオカマやろうが!俺の大事なに手ェーー出してんじゃねェ!!!」

サンジは、くいっと斜めに構えた姿勢にいかり肩で、ポケットに突っ込んだ手、
口元をイライラと上げ下げされる吸いかけのタバコ、ぐる眉が、ぎっとつりあがり、もう臨戦態勢だ。
こんなサンジ相手じゃ、誰だって逃げ出す。いやむしろ肝っ玉の小さいヤツなら即死しそうな凶悪面だ。
ちびったっておかしくないくらいだ。

実は、サンジは、ウソップとが二人連れ立って島に降りていったのが、気がかりだったのだ。
直ぐに後を追おうとしたが、いいタイミングでナミから用事を言いつけられ、探し出すのに、今までかかったのだった。

「違うの!サンジ!!!ボンちゃんは悪くないの!私が……」

ボンちゃんの前に出て、両手を広げ、やめてとは懇願した。

「ん?何、ちゃん?クソオカマヤローを庇うってのか?じゃーなにか?!
 ウソップに頼み事っつってたのは、アレか?オカマとの仲、取り持って欲しいつ〜ことか?」

すっぱーとタバコを吐き出して、それでも格好をつけるサンジ。粋だ!いぶし銀だ!
もう、ボンちゃんの心臓はどっきどっきだ。ボンちゃんは、反論することさえ忘れて、魅入ってしまった。

「ちっ!やってらんねェーーーー!!!邪魔もんは俺かよ!!!好きにしやがれ!!!」

思わず、ボンちゃんを庇ってしまったに、サンジの怒りが爆発した。
サンジは、なんだか全然違うことを想像し、勝手に怒って宿屋を飛び出していった。

まぁサンジが誤解するのも無理はないが、なんてったって、ここ連れ込み宿の一室ですから。
しかも、拘束椅子だ?天井から滑車だ?縄だ?おまけにサイドボードのイケナイおもちゃの数々。
サンジが早合点をするのも無理はないが、しかし、珍しいことだ。
サンジがレディを怒鳴るだなんて?書いてる私もびっくりだ。いやマジで、勝手にサンジ動いてやがる。

「どぅ〜〜〜すんの?サンちゃん怒っちゃたわねぃ?」

先に我に返ったボンちゃんは、珍しいわねぃとモゴモゴ口の中で、呟きながら、を見た。
余りにびっくりしすぎて、ボンちゃんもいつもの調子が出ないようであった。

ボンちゃんは、ぼろぼろ泣くをため息をつきながら宥めて、やっと、どういう計画だったのか聞き出した。

「あ〜〜んた、バーカねぃ。んなチョコ作るヨリさ〜、エッチの時、直接おっぱいにチョコかければ
問題ナッシングじゃナーイ?」

「だってェーー。そういうのは誕生日に……はっ!」

「何よぅ!もう生クリームぷれいまで実践済みかよ!!!あんたたち、恐ろしいわねぃ?
ちょっぴりあちし、羨ましいわねぃ」

なんだか、マジで女の子同士の話になっていた。微妙にオカマは女の子とは言いがたいが、サンジに恋するもの同士。
妙な友情が芽生えはじめたようだった。

「はっは〜ん。あちしに任しときなサーイ。サンちゃんから『ごめんなサーイ』させて見せるわよう!
 あんたの乙女心、あちしが手助けしてやるわねぃ!ダチのためなら、このオカマ魂、賭けてみせよう恋の花!
 さ!とっとと、仕度して!ムギちゃんの船行くわよ〜〜ん!!」






ところ変わって、GM号のラウンジ。
サンジは、ぷんすか怒って帰ってきたはいいが、なんとも合点がいかないらしい。
サンジは、バーンとドアを乱暴に閉めたかと思えば、がっしゃがっしゃと皿を出してみたり、
机をばんばん叩くかと思えば、自分の頭をぽかぽかと殴り出したり、かきむしったり、
なんとも奇妙な行動を取るのだ。

――。愛しいプリンセスだなんだかんだと、大事に大事に育ててきたのに、オカマ如きに取られるなんざ、
  俺たちのめくるめく愛の日々はなんだったんだ!いっそ、俺は、男色に走ってやる!
  
  だぁあああああ!!!そうじゃねェ!俺はレディが好きだ。間違うな。うん。

  なんか、俺、見落としてねェか?

  あぁ、あっこは連れ込み宿だ。うん。男と女がやる目的で入るところだ。合意の上で……。ご、合意?!

  ぎゃーーーー!!!もっ、もしかして、は、もうやっちまった後だったつ〜のか?
  で、あの涙は、俺とボンちゃん『どちらも選べないわv』なんつ〜て泣いてたってのか?

  うそだろ?ヲイ!?俺様のビッグマグナムが、ボンちゃんの白鳥に負けたつ〜〜んか?

  まてまてまてェ、落ち着け、俺。

  は、服着てたよな?ボンちゃんも胸元におっぱいボーンと出てたが、服着てたぞ。
  だいたい、あのおっぱいは、のおっぱいだ。俺様の目に狂いはねェ!

  つ〜〜ことは、なんだ?まだ事の前だよな?だってオカシイだろう?
  とするのに、おっぱいボーーンじゃよ?邪魔じゃねェ?

  いや、待てよ?俺と出来ないタイプのエッチっつ〜たら?……レズ?

  でっかいおっぱいが四つ、すりすり、擦れて擦れて、『あふ〜んv乳首が勃っちゃったv感度いいわねぃv』

  ぎゃーーーーー!!!やめろ!!!もうやめろ!俺!!!心臓に悪ぃ。絶対悪ぃ……。

  くっそーーーっ!鼻だ!長っぱなが、何か知ってるに違げーーねェ〜〜〜!!!
  あんのヤローどこ行きやっがった!!!見っけたら蹴り殺して鼻はスライスだ!マリモのつまみに出してやる!


怒っているのかと思えば、冷静な表情になったり、がぼーんと驚愕の表情になったり、
めまぐるしく変わるサンジの表情を、物影から盗み見るクルーは、なんとも言えない顔になっていった。

赤。青。黄色に白に灰色、終いには赤黒くなっていくサンジの顔色に、チョッパーは医者としての使命感に燃えたが、
ナミを含め他のクルーが『絶対関わらないほうがいい。アレはいつもの欠乏症だ』と、言うので、
あっさり、診ることを止めた。

『おとなは大変なんだな。俺は、まだまだ立派な海賊になってないな。よっしっ!がんばるぞ!!!』

『いや、立派なおとなっていうのはね?チョッパー……』

と、ナミが諌めようとするが、ゾロがさえぎった。

『ありゃ、ただのアホエロボケコックだ。チョッパーは真似すんなよ』

『なぁなぁなぁ、俺、腹減ったぞ?おやつ、まだか?ん?なんだ?サンジ帰ってるじゃんか?』

「サ…むごっごっ……」

サンジに向かって行こうとするルフィをゾロが口元を押さえ込み、ナミが頭を殴りつけた。

『アホか!てっめェーー!!あの様子じゃ、まともなもんは出てこねェーーよ!!!』
『まったく、あたしが奢ったげるから、街行きましょう。多分、あたしの勘だと、GM号にいたら巻き込まれるわね』

『おおっ!そっか。悪ぃなナミ』
『巻き込まれるくらいなら、魔女のお供のほうが、マシだな。っい!!イテェな、なにしやがる!』
『なんだか分からないけど、怖いのか?俺も行くぅううう』
『あらあら、コックさんも大変ね?鼻くんはどうしたのかしら?いないけど?』

こそこそとサンジに見つからない隙に、クルーは船を降りていこうとした。懸命な判断だが、サンジのほうが
一瞬早かった。サンジは、憤怒に燃えたぎり、ウソップを求めて街に飛び出して行ってしまった。





 

 


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