す〜
ぷかぁ〜
サンジは、ぼんやりとラウンジの窓から外を見ながら、タバコの煙を吐き出した。
「どうすっかなぁ…。」
一見ボーっとしているように見えるその姿は、実は、ただぼーっとしているのではなかった。
サンジは悩んでいた。
「やっぱ和食だろうなぁ…。」
青い空に青い海に白い雲。
晴天だ。
たぶん、夜もそれほど寒くはならないだろう。
宴会にはちょうどいい。
「そういや、プレゼントはどうすんだ、俺。やっぱ用意しなきゃダメか? 料理だけじゃダメダメか?」
小首をかしげながら、呟く。
その視線が、下に落ちる。
「…にしても、よく寝るな、こいつ。」
甲板ではいつものように緑頭の剣士が惰眠を貪っていた。
直射日光に全身を炙られていても全然平気である。
よくもまあ、こんなにぐーすか寝れるなぁとサンジは感心する。
サンジはあまり睡眠を多く取る方ではない。
バラティエにいた頃から、いや、客船のコック見習をしていた頃からそうだった。
コックという仕事は実に多忙だ。
夜は遅い。朝は早い。
自然にサンジも、短い睡眠時間で十分な休息を取れるようになっていた。
たまに多く寝すぎてしまったときなどは、逆に体に疲労が溜まっていて、しかもひどい頭痛に悩まされる。
だから、暇さえあればいつまでも寝腐っている剣士には、感心するやら呆れるやらだった。
本人に聞くのが早いか。と思いながら、サンジは甲板に出る。
聞いても答えるかなぁ、と思いながら、ゾロの傍らに立つ。
軽く蹴ってみる。
「おい、クソ剣士。」
起きない。
二度三度と蹴ってみる。
「アホマリモ、クソマリモ、マリモマン、おーい。」
起きない。
この程度蹴ったぐらいじゃ起きねェよな。やっぱ。と思う。
飯時に蹴り起こす時だって、サンジは結構な力で蹴っているのだ。
生半可な人間なら、起きるどころか永眠するだろう。
それを腹に受けてけろっとしているんだから(「ぐえっ」とかは言っているが)、この男の頑丈さというかニブさというかはたいしたものだ。
嵐の時だって、みんなが必死になって舵を取っていたというのに、この阿呆ときたら嵐がきたことすら気づかずに呑気にのうのうとお昼寝タイムとしゃれ込んでいたのだ。
さすがに敵襲の時は殺気を感じるのか飛び起きるが、それ以外は寝てばかりだ。
眠れる獅子って言や聞こえはいいが、大口開けて高イビキのだらしない姿は、どっちかっていうと三年寝太郎だ。
いや、万年寝太郎か。
にしても、うるせェな。こいつのイビキは。
思い立って鼻を摘まんでみる。
ふがっと一声鳴いたきり、イビキはやむ。
というか、呼吸もやむ。
鼻で呼吸していたらしい。
口を開けてるんだから口で息すればいいのに、摘まんだ小鼻の奥がひくひくと動いて、呼吸をしようとしている。
強く摘まんでいるので吸う事も吐く事も出来ない。
このまま摘まんでたら死ぬかな。とちらりと思った。
おもしれェ。死にやがれ。と、腰をすえて鼻を摘まむ。
んがっんがっと苦しそうな音が喉の奥でする。
何で口で息しないかな。口は塞いでねェのにな。
死ぬな。これは。
ぜってェ死ぬ。
さようなら、ロロノア・ゾロ。
お前の死に様は忘れないぜ。
つか、こんな面白い死に方、誰が忘れてやるかよ。
鷹の目にもちゃんと伝えてやるからな。
ロロノア・ゾロは鼻つままれて死にました。ってな。
やべェ。すげェ楽しい。
さっさと死ね。
んがっんがっとゾロがもがいている。
顔面が蒼白になってきた。
よし死ね、とサンジが思った瞬間、がはっとゾロは口から息を吐き出した。
そのまま口呼吸に切り替わる。
何だ。呼吸しちまったよ。つまんねェ。
しかし、これで起きねェってどうよ。
ちょっとがっかりしながら、サンジはふと視線をずらし、そして思わず「うお」と口に出して驚いた。
大の字に寝たゾロの股間が、立派にテントを張っていた。
何でだ?
こいつは呼吸困難になるとチンコが勃つのか?
吐けなかった息がチンコに溜まったか?
不思議に思いながらも、サンジはゾロの腹巻をずらし、ズボンを下げて、テンパったブツを掘り出す。
おー勃ってる勃ってる。
すげェ固ェ。
ヘソまで反り返ったピーって奴だ。
突っついてみる。
ぴく、と一瞬、それが動いた。
何か変な生きモノみてェ。
一番近いものといったらアレか。ナマコか。
ナマコだったら薄切りにして三杯酢か。
んで熱燗できゅーっか。
しかしこれはチンコだもんな。
チンコ薄切りにしたら痛ェだろうな。
うわ、想像しちまった。いてていてて。
だいたいナマコなら食えるが、ゾロのチンコでは食えそうもない。
いや、ラブラブはっぴっぴ夜のお楽しみタイムには、何度となくしゃぶったことも数え切れないほどだが、
今はとりあえず、そういう事はこっちに置いといて。
食料として考えると、これほどまずそうな食材もない。
レディには絶対出せない。
こんなものをレディに食わせるくらいなら、俺のチンコを輪切りにした方がまだマシだ。
うわ、また想像しちまった。いてていてて。
だが、俺のチンコは自慢じゃないが、こいつのに比べたら、色といい形といい佇まいといい、まさにレディに差し上げるのにふさわしい逸品だ。
こいつのは色も形も最悪だ。
なんだ、この色。
どれだけ使い込んだらこんな色になるんだ。
つか、何色っていうんだ、これ。
赤黒? 紫? こげ茶?
もしかしてアレか、これが噂に聞く、どどめ色ってやつか。
更にカタチが凶悪だ。カタチが。
血管が浮いてて、カリんとこもなんかごつごつしててエラが張ってる。
んで上に向って弓なりに反ってる。
おまけにちょい左に曲がってる。
そいでもって無駄にデケェ。
半端じゃなくデケェ。
もう少し遠慮とか謙虚とか控えめとか、そういう言葉を正座して小一時間とうとうと説教したくなるほどにデケェ。
これを俺様のプリティなおケツに突っ込むわけだろ。こいつはよ。
ゾロのデカブツを握ってみる。
こんなの突っ込まれて、よくガバガバにならねェな、俺のケツ。
いや、それともなってんのか?
でも別にクソ垂れ流し、とかそんな事にはなってねェよな。
こいつにやられる前よりもクソが太くなったとかそういうこともねェな。
つか、俺がひりだすクソよりもこいつのチンコの方が太いってどういうこったよ。
大丈夫か、俺のケツ。
そりゃ、初めの頃、毎回流血沙汰だったのも頷けるよな。
こんなモン入れられてたんじゃな。
だいたいこいつは切羽詰ってくるとこっちの事情もお構いなしで突っ込んでくる。
こんなブツ、人のプリティーなおケツに入れようってんだから、もちょっと思いやりを持ってくれてもいいんじゃねェか?
それともここは、それほど求められちゃってんのね、俺って愛されまくっちゃってんのね、嬉しいわクソダーリン、とか喜んどくとこなのか?
ダーリン、だって。ぷぷ。
どのツラひっさげて、ダーリンだよ。
じゃ何か。俺はハニーか。
こんな凶悪犯みてェなツラで、「愛してるよ、マイハニー」とか言われたらどうするよ。
さぶっ。
つーか、怖っ。
んで、何か。俺が「お帰りなさいダーリン(はぁと)。お風呂にする?ご飯にする?それとも、あ・た・し?」っつーのか?
裸エプロンでか?
それはどうよ。
そんでこいつは「もちろん君だよ、スィートハニー。」とか言っちゃって、この極悪棒を俺のスィートアナルに捻じ込むわけだな。
…鳥肌立っちまったじゃねェか。
そういうスィーティーでドリーミーでゴージャシーなひとときと、この極悪で凶悪で最悪なチンコはどうにもそぐわない。
持ち主もそぐわないが、チンコはもっとそぐわない。
だいたい可愛げがない。可愛げが。
チンコに可愛げを求めてもしょうがないが、可愛げがない。
も少しこう、楚々とした佇まいにならんか。このチンコは。
手の中のそれを、握ったりひっぱったり、弄くりまわすサンジ。
お、そうだ。
せめて包茎ならいいんじゃねェか?
「包茎」と「可愛げ」はなにやら仲のいいお友達っぽいぞ。
サンジは、ゾロちんを包茎にすべく、皮を伸ばし始める。
こいつ結構カワに余裕がねェな。
何でだ。デカイからか。
剥けてからもチンコが育ったっつうことか。
何だか憎くなって、えい、えい、と、根元の方から皮を伸ばしてくる。
全部伸ばしても、ゾロ棒は皮に包まれる事なく、頭の方だけちょっと出ている。
それをやたらとムキになって、丁寧に丁寧に根元から伸ばし、ついには完全包茎にする事に成功した。
デカイのに勃起してるのに包茎、という図が出来上がる。
すげェおもしれェ。
おもしろすぎる。
しかし、先端を押さえている手を離すと、また、るるるっと皮は下がって亀頭が顔を出す。
だめじゃん。
どうするこれ。上の方、茶巾みてェに縛るか。
リボンでよ。
リボンはやっぱ陰毛に合わせて緑か。
いやここはコントラストを考えて赤か。
クリスマスカラーだな。
プレゼントラッピングって奴だ。
クリスマスにはまだ早ェぞ。
リボンの端っこは、やっぱ、Σ ←こう切んなきゃダメだ。
リボンの端っこは Σ と決まっている。
つか、誰にプレゼントだ。
俺にか。
いらねェよ、こんな茶巾包茎。
つか、俺がもらっちゃダメじゃん。プレゼント。
だからってこいつだって茶巾包茎のプレゼントは困るだろ。
楽しそうに、ゾロのそれを弄くりまわすサンジ。
ここで突然敵襲がきたら、えれェこったよな、とか思いながら。
サンジの脳裏に、ブツをおっ勃てたまま敵陣に斬り込んでいくゾロの姿が浮かんだ。
すげェ! 四刀流だ!
しかも、そのブツは茶巾包茎で、先端に赤いリボンだ。
耐え切れずに吹き出した。
敵さんもびっくりだ。
ハチマキ巻いて、両手に刀持って、口にも刀咥えて、ちんこ出したまま追い掛け回されたら、大概の奴は逃げる。
しかも勃ってる。
しかも茶巾包茎。
しかもクリスマス仕様。
誰だって逃げる。
必死で逃げる。
戦うどころじゃない。
きっとみんな半泣きになって逃げる。
船の上は阿鼻叫喚の惨事だ。いろんな意味で。
そんな事を考えながら、ゾロちんをずっと弄りまわしていたら、次第にゾロの先っぽがぬるぬるしてきた。
ぬるぬるを指につけて、ゾロの鈴口を指の腹で擦ってやると、ゾロの引き締まった腹がびくりと波打った。
起きたかと思って顔を見上げるが、ゾロは目を瞑ったままだ。
これでまだ起きねェのか?
もしかして寝たふりしてんのか?
確認の意味を込めて、ゾロちんを握ったまま、親指の腹で先端をぐりぐりと強めに擦ってみる。
また腹筋がびくりとしたが、目を開ける様子はない。
先端をぐりぐりしていた親指を、今度は裏筋に当ててぐりぐりする。
ゾロの、弱いところ。
腹筋がびくびくっとしたが、目を開ける様子はない。
エラの張ったカリの周りを、ぐりぐりしてみる。
もっとゾロの弱いところ。
「うふっ」と声が漏れたが、目を開ける様子はない。
つか、「うふっ」ってなんだよ。「うふっ」って。
サンジは、指でゾロの鈴口をぱくっと開いてみる。
ブツがデカイので尿道口もデカイ。
そこをパクパク動かしながら、心の中で「こんにちわっ♪僕、ゾロちんっ♪」とか喋らせてみる。
かなり楽しい。
それにしてもデケェよな。尿道口。
指とか入んじゃねェか、これ。
無理か。
ボールペンくらいなら入るんじゃねェか。
つか、既に入れてたらどうしよう。
こんな顔して、実は尿道オナニー魔だったらどうしよう。
俺の尿道も狙われてたらどうしよう。
だって考えてもごらん。外側コスってキモチイイんだから、内側からコスったらもっとキモチイイに決まってるじゃないか。
さァっサンジ君もめくるめく尿道オナニーの世界へれっつとらい(ぴしぃっ!)とか言われちゃったらどうしよう。
尿道に薔薇の花とか活けて迫ってこられたらどうしよう。
サンジの脳裏に、今度は、おっ勃てたペニスの先に薔薇の花を咲かせて、何故か頭の後ろに両腕を組み、
あっは〜んというポーズで、腰を左右にクイックイッと振りながら迫ってくるゾロ、という想像力の限界に挑戦しているような図が浮かぶ。
どんなゾロだ、それ!
ありえねェ。ぜってェありえねェ。
だって、「あっは〜ん」の時点でゾロじゃないし。それ。
いや、尿道に薔薇って時点で既にゾロじゃねェけど。
またも耐え切れず吹き出した。
咄嗟に両手で口を押さえたので、ぶひっと鼻が鳴った。
豚っ鼻かよ、俺!
爆笑してしまいそうになり、サンジは甲板に突っ伏した。
やべェやべェ。笑っちまう。
いくらなんでもここで爆笑しちまったら起きちまう。
この場面で起きられたら、俺はもう耐えられない。
絶対に「おはよう、尿道マン」って言ってしまう。
それか、「おはよう、茶巾マン」だ。
サンジは、ひくひくと小刻みに痙攣をする横隔膜を、涙を流して耐える。
笑いの波を何とかやり過ごして、サンジは、大きく息を吐いた。
ああ苦しかった。
死ぬかと思った。
爆笑死って、そんな死に方あるか。
海賊の死に方じゃねェな。
改めてゾロ棒に向き直る。
神妙な顔をして、ゾロ棒をズボンの中にしまった。
丁寧にハラマキも元通りに直す。
音を立てずに静かに立ち上がる。
そしてサンジは、ラウンジの中に戻っていった。
* * *
その夜。
「HAPPY BIRTHDAY! ゾロ!」
クラッカーぱーん
シャンパンぽーん
ロウソクふーっ
拍手ぱちぱちぱちぱち
ラウンジはいつにも増して賑やかな雰囲気に包まれていた。
テーブルの上には、サンジが腕によりをかけた、ケーキ、ご馳走の数々。
「すっごぉい、サンジくん、これキレイ〜。」
「本当。お花みたい。」
「おお? すげェぞ、サンジ。うまそー。」
「へー。さっすがサンジ。」
「これなんだ? なんていう料理だ? サンジ。」
わいわいがやがやと実に賑々しいクルー達に、サンジは、極上の笑みを浮かべた。
「茶巾寿司だ。」
お花畑の如く、大皿の上いっぱいに並べられた、茶巾寿司。
薄く焼いた卵で、五目寿司がくるんと可愛らしく包まれている。
ご丁寧に、一つ一つ全て、紅ショウガで赤いリボンがつけてあった。
何ゆえ茶巾で、何ゆえ赤いリボンか、それはもちろんサンジにしか分からない。
サンジは根性を総動員して、内なる大爆笑を押さえ込んでいた。
気を緩めると、この場で気が狂ったように笑い続けそうだ。
ゾロがうまそうに茶巾寿司を口へ運ぶ姿を目にすれば、それは尚の事だ。
茶巾が茶巾喰ってる…。
もうサンジの横隔膜はさっきから細かく痙攣しっぱなしだし、それを気力だけで押さえ込んでるから、
鼻の穴もひっきりなしに開いたり閉じたりしている。
幸いにして、そんなサンジの異様な様に気がつくものはいなかったが。
気が遠くなるほどの苦行に耐えながら、サンジは思っていた。
そんで飯の後はこいつを倉庫にでも呼び出そう。
そんでこう言ってやるんだ。
「お誕生日おめでとう、クソダーリン。飯か風呂か? それとも、お・ケ・ツ?」
もちろん裸エプロンだ。