ピンクのあひる





食料調達のために寄った島で、見つけた「あひるの卵」もちろん、食材として購入した。
流石にここは、グランドライン。不思議な事もあるもんさ。

連日連夜の悪天候にGM号は悩まされ、最悪の大嵐からやっと危機を逃れたのは、昨夜の事。
不眠不休で働いたサンジは、朝食の仕込みの最中に、ソファで寝てしまった。

「はっ!」と、妙な気配で目覚めると、腹の上にピンクの塊が乗っている。
  
     なんだこりゃ?

と、つまんで、寝ぼけ眼をこすりつつ、見ていたら

「ぴぃ」

     ??????

「ぴぃぴぃぴぃ」と、ピンクの塊が、鳴く。

ピンクのひよこ。

眼が点のサンジ。

     なんで、ピンクのひよこがいるんだ?わけわかんねェ

「ぴぃぴぃぴぴぴぃ」
すりすりと、おねだりするピンクのひよこ。

「食いたいやつには食わせてやる!」
コックのプライドを刺激されたサンジだが、

     何食うんだ?こりゃ?そもそも、何のひよこだ?

と、首をかしげ、しばし考えるサンジ。

ふっと、見上げれば、キッチンに散乱する食材……あひるの卵が、割れていた。
そう、これは「あひるのひよこ」らしい。



どやどやと、朝の静寂を破り、走ってくる足音がした。

「サンジ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜めし〜〜〜〜〜〜〜〜」
「クソゴム…悪ぃ〜まだ出来てねェ」
「なんだ?サンジそりゃ?」
「ん?こりゃ〜あひるのひよこだ」
「なんで、ここに居るんだ?」
「知らねェーよ!!」
「そっか!不思議あひるか!食えんのか?」
「食うのかよ!!」
「肉〜〜〜〜〜〜〜食いてェ〜〜〜」

”どかーーーん”
かかと落としを決められて、床に沈むルフィ。

     クソやろー!!!こんな可愛い子を食べるのかよ!!!
     って、俺って…変じゃねえ?????

     すりこみってやつなのか、ピンクのあひるは
     俺のそばから離れやしねェ。
     嫉妬心も強ェのか、ナミさんロビンちゃんには
     ガンたれまくりの可愛げのねェ、「ちゃん」
     おぅ、俺様ったらヨ…名前まで付けちまった。
     ちゃん。可愛いだろ?

小さなひよこのうちは、サンジのポケットに
少し大きくなってからは、サンジの頭に
そして、今は、サンジの肩に、ちょこんと乗っかるちゃん。

甲板を、おしりをぴょこぴょこ振り振り、歩くちゃん。
お風呂で、ばたばた暴れるちゃん。
サンジの胸の上で、「グーガァー」と、イビキをかいて眠るちゃん。

片時もサンジから、離れない。


「いや〜サンジ、おまえら本当に、そっくりだな」
心から、感心しているウソップ。

「何が言いてェ…長ッ鼻!」
ぴきっと、ぐる眉を微かにあげ問うサンジ。

「いや〜親が親なら子も子ってな、うるせェとこ、そっくり!」
ついつい、余計な事を言う。

”どこ〜〜〜ん”
ラウンジの壁にめり込むウソップ

ちゃんの何処が、うるせェんだヨ!!!くそプリティな声じゃねェーか!!!」
言うが早いか、足が早いか…この男。

「けっ!ガンたれる目つきといい、足癖の悪さといい、
 てめェそっくりじゃねぇか?うるせいワガママなガキ!!」
思わず、言ってしまった本当の事。

「んぁあ!!喧嘩売ってんのか!!クソまりも!!!」
手をポケットに突っ込み、そこらのちんぴらの様なサンジ。

「グワァーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
けたたましい叫び声をあげて、ゾロの頭を蹴りとばすちゃん。

「てめぇ〜〜〜〜うっと〜〜しいぞ!!」
頭の上のちゃんを、振り払おうと必死のゾロ。

「グワァ!!!グワァ!!!」
あっちこっちと飛びながら、凄まじい蹴りを入れるちゃん。

ちゃんに何てことすんだ!!クソまりも!!!」

クルーの誰がどう見ても、ちゃんの方が優勢だと思うのだが
サンジの眼には、魔獣に襲われている様にしか、見えないらしい。

ドタバタと、やかましい二人と一匹。

「うるさい!!!」
”どこん!!!!!”
お約束のナミの鉄拳で、喧嘩はおさまった。

ナミのどつきを、するりとかわし、
「ガァ〜ガァ〜」と、大慌てで逃げて行くちゃん。

行き先は、ナミのみかん畑。
このちゃん、みかんの木の根っこを掘り起こすのが大好きで、今日もまた、悪戯。
土を浴びてピンクの羽根のお手入れに余念が無い。

「ぎゃ〜!!!!!何て事してんのよ!!!」
怒りに震えるナミを、尻目に

「グェ〜グェ〜」と、楽しげな声で、逃げ回るちゃん。

「まったく!サンジ君!のしつけ、ちゃんと、しなさいよ!」
怒りの矛先は、当然サンジに回る。

「ずびません!ナミさん!!」
ひたすら謝るサンジ。

「けっ!くだらねェ」
アホらしくて、見ていられないゾロ。

「ガァ〜ガァ〜」

「ん?どした?ちゃん?」

サンジの足元で、何やら訴えかけるちゃん。

「サンジ、ちゃん(お腹が痛い)って、言ってるぞ」
メインマストの影に隠れていたチョッパーが通訳する。

「フゥガァ〜〜」
ふぅふぅと苦しそうなちゃん。

「(なんか、出そう)だって」

「大変だ〜〜〜〜!!!ちゃん、死なないでェェェェェ!」
祈りのポーズを取り、絶叫するサンジ。

「バカか、でめェは」
サンジのアホ振りに、とうとうここまで症状が進んだのかと、呆れた顔のゾロ。

「あん!!なんだと!!やんのか!!てめェ!!」
額にびきびきと青筋を立て、ガンたれるサンジ。

「うるさい!!!」
”どこん!!!”と、ナミの鉄拳が、また落ちた。

「チョッパー、診察出来る?」

「あっ!うん!おれ、やってみるよ!!」

「って、おまえ、あひる診れんのか!」

「………」



チョッパーの診察中
ちゃん、そうとうお腹が痛いのか、背を丸め息荒く羽でお腹を押さえている。

「う〜〜ん」

「チョッパー、どうだ?わかったのかよ!!」

「うん。ちゃん、卵が出るみたいだ!」

「へっ??」

「産みの苦しみってやつだね」

「へっ??」

オイオイ、あひるに産みの苦しみって、あるのか?

「(暗くして、一人にして)だって」

「そっか……ナミさんに、聞いてくっからよ、待ってろ」

本来、あひるってヤツは、藁とか草の中に卵を産むらしく仕方ないから、
みんなの要らない服を刻んで、産卵所を作ってやり、様子を見る事になった。



気が気でないサンジ
     ハァ〜〜、あんな弱な腰してんのに、卵なんて出てくんのかよ
     いったい誰だ!!!!俺の大事なちゃんを、孕ませやがったヤロウは!!!

オイオイ、サンジ……
あひるは成長すれば、やってなくても、勝手に卵は産むぞ無精卵つ〜やつだがな……。
完全に、親バカ状態である。

ひょいと、覗こうものなら、えらい勢いで、ちゃん怒り狂うもんだから
今夜は、一人寂しく寝る事になった。

翌朝、サンジを
「ガァガァ」と、けたたましい喜びのあひるダンスで、お出迎えをするちゃん。

「よしよし、ちゃん。ちゃんと産めたか?」
「おっ!!クソッすげェ〜な!!偉いな、ちゃん」

箱の中に、卵が1つ。
すりすりと、サンジの手に頭を擦りつけ
(褒めて!褒めて!!)と、言わんばかりのちゃん。
抱き上げて、チュっと、キスして可愛がるサンジ。


「サンジィ〜〜〜〜〜〜〜〜めしィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「お〜〜〜出来てるぜ!!」
「サンジ君、ちゃん卵産めた?」
「はい!!ナミさん!おかげ様で!!!」
「うっしっしっしっ〜。卵、食いてェ〜サンジ焼いてくれ!」

「バカやろ〜!!こりゃ、ちゃんの子供なんだぞ!!食えっかよ!!
 で、いったい誰なんだ!俺の大事なちゃんを、襲いやがったヤツは!!!」
蒼眼に凶悪な色を落としたサンジが、男達をぎろりと睨んだ。


「てめぇはバカか?あひると、やれっかよ!」
表情を変えず、もっともな意見のゾロ。

「…コックさん……そもそも受精しないと、思うけど」
そういう問題じゃないと、思うが…ピントのずれたロビン。

「オッオレじゃねェッぞ!!」
誰も、お前が襲ったとは思ってないが、焦りまくるチョッパー。

「…サンジ……俺はもう何も言わん」
サンジのバカ親ぶりに、呆れ果てて、ため息をつくウソップ。

「サンジ君、はい、此処読んで」
どうしようもない人ねと、ナミ。

ナミに手渡された「あひるの飼育書」さっと眼を通し、納得したサンジ。


海の上での生活は、とかく食料調達に困るのだ。
毎日1個、ちゃんが卵を産んでくれれば大助かりである。

ルフィと、ナミのみかん畑を荒らしてみたり、
ウソップのうそに、チョッパーと本気で騙されてみたり、
ナミとロビンと、女同士(?)の会話をしてみたり、
ゾロの昼寝に、付き合ってみたり、
ピンクのあひるのくせに、モノの分かったような顔をして、
チョッパーの通訳もあって、結構上手い事、GM号に溶け込んだちゃん。

サンジだけは、いつまでも特別で、みんなの相手をしつつ
最後は必ず、サンジの腕の中で寝るちゃん。






可愛いちゃんとの生活も、終わりってやつが、やって来た。

    海賊家業をやってりゃ、敵船とのどんぱち戦闘なんて、当たり前でな…
    俺様ときたらよォ……妙な慣れ、余裕なんて持っちまって
    打たれる羽目になっちまって…
    覚悟を決めたのに、痛くねぇ…んだよ……
    当たりめェーだな………

    「グワァーーーーーーーーーーー!!!」
    と、ちゃんが、懐に飛び込んで来てよ…

    代わりの弾にあたっちまった……

    チョッパーの治療の甲斐も無く…死んじまった。

    冷たくなったちゃん。


    俺様が、美味しいあひる料理にしてやった。

    ナミさん、ロビンちゃん、長っ鼻の批難の眼
    クソまりもの呆れた眼
    ルフィの拗ねた眼
    チョッパーの「わかっているよ」と言う眼

「喰えよ!」

クルー達の刺すような眼が、サンジに注がれた。

「……こりゃ〜もう、ちゃんじゃねえよ。ただの肉のかたまりだ……

 ちゃんの魂は、もう、抜けちまってんだぜ…

 人間の食い物として、生まれた命だ…喰ってやらなきゃ……悪ぃだろ…

 俺達が喰って…俺達の血と肉になって……(ずっと、一緒になるんだから…よ)

 ………喰ってやってくれ!頼むヨ…」

ポタポタとサンジの蒼眼から、涙が零れる。

「おっし!!喰うぞ!!」
サンジの意を汲んだルフィの言葉で、かしゃかしゃと、食事が始まった。


    辛ェ事さしちまって…悪ぃ……



「子は親に似るって、言うけど、最後の瞬間まで……コックさんそっくりだったわね……」

「サンジ!!俺は、許さないからな!みてェに、自分の命投げ出して
 俺達を、かばう生き方。サンジ!やめろよ!」

「ちょっと、ルフィ、あんた言い過ぎよ!あんただって、命投げ出してんじゃない!」

「だって、俺、負けねェもん」

「あんたーーーねぇーー!!!」

「いや、かまわねェよ…こいつは、いつも、無茶し過ぎだからな
 まっ!言われても、直らなねぇだろうしな」

「そうだな〜サンジの自己犠牲精神は、時たま、見てて痛くなるからなぁ〜
 サンジらしいけどよぉ!(危なっかしくて、見てられねえよ)」

サンジは、レディの給仕をすることも忘れ、甲板に出て行った。


「いや〜しかし、は、本当に可愛いやつだったよな〜チョッパー?!」

「あっ!うん!凄くふかふかしてさ」

「そうよね、凄くおちゃめで、お転婆で、飽きない毎日だったわ」

「まぁな、と昼寝するとよ、また良く寝れたな。触り心地が良いせいか?」

「触り心地って……あんた、きもいわよ」

「てめェ〜何考えてやがる!」

「えっ!?ゾロって、そういう趣味だったのか??」

「おいおい、いくらゾロが魔獣でも、それはやってないだろう」

「剣士さんは、小動物に弱いのよ。知らなかったの?」

「しょっちゅう、サンジ君と、の取り合いしてたじゃない」

「しっしっしっ、そっか、ゾロはそうなのか」

「いっ!?黙れ!!てめェーら!!アホコックと一緒にすんなッ!!!!」


「あのね、の最後の言葉…オレ聞いたんだ
 (私を食べてね)だったんだ……だから、サンジは辛いのに、料理したんだよ」


「しっしっしっ、!うめェな!!何か力が湧いてきたぞ!!」

「そうだな、は、俺達の中で生きていくんだな」

「まったくだ」








    あいつらの声が、遠くから聞こえる…
    俺は、乗り越えれるのだろうか……


    
    いや、乗り越えてやるさ!!!
    でなきゃ〜この船に乗る資格は無え!!!





その夜、夢を見た。
ちゃんの夢。
ピンクのあひるのちゃんが、可愛い女の子になって「ガァガァ」言ってる夢。

不思議と、俺には、
「ありがとう、サンジ。また、逢いに来るから…」って、聞こえた。




おしまい





後書きという名の言い訳
ヒロイン、すみません!あひるでした!!!しかもサンジくりそつ。
これは、自分のために書いたもんでして、私以外の人はあひるにはなりたくねぇ〜だろ!と、
反省することしきり(笑)
GM号に乗るならサンジのペットのあひるちゃんがいいなぁ〜なんてアフォーが考えた話でした。
しかも、食べちゃったよ!嵐バージョンもあったんですが、あえて食べる結末。

壁紙は友人のやさぐれ隊長作ですv




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