あの海の果て〜楽園〜

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 化物が現れるまでの数日、は考えた。
 一人で火拳を捕らえれるわけがない。火拳が私を殺そうと思えばたやすくできるが彼はそうしない。黒ひげの情報など、私が手に出来るかわからないのにな。それに、私は女だ。犯そうと思えばいつでもできるが彼はそのそぶりもない。
 ずいぶん、友好的な海賊だと思う。火拳がそういう態度でいるならば、私も友好的にならなくてはいけない。

 そう心に決めたときから、はエースをヒトとして認めた。海軍も海賊も関係なしに、エース自身を見た。
 船に備蓄されていた食糧ではもたないと釣り糸をたれるエース。
 たまに顔をだす海の恵みを嬉々として仕留め、得意げにさしだすエース。
 ニィっと笑う顔が、海賊らしくなくて、温かさに包まれているように思えた。
 エースは聞き上手だった。の口からの生きてきた道をどんどん聞き出していった。そして、エースも軽く身の上話めいたものを口にするようになった。
「白ひげはおれの親父だ。ああ、ほんとの親父なんていねェ。白ひげだけだ」
 父親を語るときのエースの表情に一瞬影が落ちた。気になるが聞いてはいけないことなんだ、とは口を閉じた。

 語り合い、笑いあい、夜の帳がおりる水平線を何度も二人でみた。惹かれるなというほうが無理だった。好きになるなというのが無理だった。いつしか、しっかりとの心にエースへの恋心は根付いていた。

 二人だけの楽園。そばにいられるだけでいい。現実を思えば、いつか終わる。
 まだかまだか、と待ち望んでいた化物との対峙。それは、いつしか、苦痛でしかなくなった。

 終わりのみえる楽園。
 それならばとは考えた。

「エース、お願いがある」
「ん? 少尉ちゃんがお願いって珍しいな。何」
「……抱いて」
「はっ!!??? 」
「だから、一度だけでいい。セックスして欲しい」
「……」
「無言になられると困るのだが、そんなに魅力ないか? 」
 エースがときおり熱い視線で自分をみていることはわかっていた。男と女。何日も二人っきりの状況で何かが芽生えないほうが可笑しいのだとは思う。
 目の前で、じっと見つめてくるエースの視線は焦げつくほど熱い。視線だけで濡れる。そんな表現を小説で読んだとき、うそだと思ったけれど、今わかった。エースから発散される雄の視線には濡れた。

「エース? 」
「チッ! あのな、おれは女と寝ない主義なんだ」
「っ! 」




2010/2/17


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