あれから三年が経ち、俺は、七つの造船会社を一つに束ね「ガレーラ・カンパニー」を作ることができた。
俺たちの海列車の偉業は、月日が過ぎるとともに、町の人々の生活に心の中に染み渡っていった。
トムさんの夢は、今も走り続けている。これからもこの町を変えていくだろう。
ンマー、偉大なる男トムの一番弟子であること。誇りをしみじみと感じるってもんだ。
俺は三十三になり、は二十二になったな。
セント・ポプラでの暮らしは順調なのか、エリノアさんが時々海列車での元に通っているようだが、エリノアさんは、俺には何も話してくれねェ。ンマー、と何かがあったことを察しているんだろう。
何も聞かれず何も聞かされないことが、ありがたくもあり苦痛でもあった。
三年の間に、政府の目をくらますため、俺は髪型を変えた。剃り跡なんか残さねェほど必死で剃っていたひげも、のばしてみた。
ンマー、昔は、少しでもとの年の差が縮らねェか、と毎日必死で剃っていたのになァ。
ラフな格好が好きだったが、堅苦しいスーツを着るようにした。
エリノアさんが、笑ったな。
「アイスバーグ、変よ。それ」
「ンマー、仕方ねェ。俺はもう十分おっさんだ」
ンマー、バカ受けだった。そこまで笑うかっていうほど、エリノアさんは笑った。コロコロと笑うエリノアさんの笑顔は、俺を幸せな気分にさせる。錯覚にしかすぎねェが、が笑っているように感じるからな。エリノアさんの顔にを重ね、二十二になったを想像する俺の眼は怪しいってもんだ。時おり、いぶかしげに俺を見るエリノアさんに、俺はとぼけたふりをするしかねェ。
ンマー、俺だってこの姿は変だ、と思うぞ。しかしな、どれもこれも今までみてェな職人のあんちゃん姿で通るほど、世間は甘くねェってもんだ。スーツひとつ着込み、髪を刈るだけで、人からみたら立派な人物に見えるなら、俺はかまわねェ。それだけで、ひとつの契約が取れる世界だ。
ンマー、俺は、この町を変えるためなら、なんだってしてやる。たとえそれが俺に似合わねェ格好でもいい。カッコいい、と言って欲しい人もいねェ町だ。
ンマー、俺の目的が達成される日が、こんなことで近づくなら、それでいいじゃねェか。
トムさんに庇護されていた時代は、終わったんだ。俺は、大人のなりした子どもから、大人にならなきゃいけねェ。
そんな俺のところに、懐かしいココロさんが訪ねてきた。ンマー、驚いた。ココロさんに孫ができていたとはなァ。いったいいくつなんだあの人は。
であった頃のより小さなチムニーは、ひょいひょい俺の膝に上がってきて、ぺちぺち俺を叩くがな、同じちびでも自分でも驚くくらい何も感じねェもんだ。幼い子ども特有の可愛らしさは感じるがな。をおぶったあの時感じた温けェもんは、わいてこねェ。あれはなんだったんだろうなァ。
ンマー、ただひとつわかったことはな、俺はロリコンじゃねェってことだ。